野球ルール その1



■ファールチップ■



 ファールチップとは、投球が打者のバットに当たったにも関わらず、そのまま鋭く(一直線に)捕手のミットに収まった場合の事です。

 捕手がこのボールを捕球すればストライクとなり、地面に落とした場合はファールボールとなります。

 バットにかすったボールが、最初に捕手のミットまたは手に触れた場合は、地面に落ちる前に捕球すればファールチップ(つまりストライク)になりますが、最初にミットまたは手以外の場所に触れた場合は、その時点でボールデッド(ファールボール)となり、地面に落ちる前に捕球したとしてもファールです。

 なお、投球がバットに当たって少しでも上に上がった場合は、捕手がダイレクトで捕球すればファールフライで打者はアウトになります。


■振り逃げ■



 通常、打者は3ストライクで三振、そしてアウトになりますが、その3ストライク目の球がワンバウンドしたり、捕手が捕れずに後ろに逸らしたりした場合は、まだアウトではなく、打者は一塁へ走ることが出来ます。これをり逃げといいます。
 (正式な野球規則の用語ではありませんが)

 振り逃げという名称ですが、見逃しの三振の場合にも適用されます。

 もちろん、捕手がボールを持って打者にタッチしたり、打者走者が一塁に到達する前に一塁にボールを投げ、一塁手がボールを持って一塁を踏んだりすれば、この打者はアウトになります。

 振り逃げが適用されないのは、無死または一死で走者が1塁にいるです(1・2塁、1・3塁、満塁の時も同様)
 これは、打者が三振した時、捕手がわざと落球して振り逃げの状態を作り、すぐにボールを拾って併殺を取りに行ったりするのを防ぐためです

 この場合、3ストライク目の球を捕手がはじいたり逸らしたりしても打者はその場でアウトですが、他の走者が次の塁を狙って走るのは全く自由です。

 二死の場合は、走者がどこの塁にいても関係無く、振り逃げはあります。




 ※2006年までは、打者が、第3ストライクを捕手が捕球出来なかったのに気付かずにベンチに戻りかけた場合でも、ベンチに足を踏み入れるまではアウトになりませんでしたが、2007年のルール改正により、走路を除く本塁周辺のファールグラウンドに直径26フィート(約8m)の『ダートサークル』が設けられ、これを打者が出た時点でアウトになる事になりました。



■インフィールドフライ■



 インフィールドフライとは、無死または一死で走者が1・2塁もしくは満塁の時に、打者が内野フライを打ち上げた際に、守っている選手がフライをわざとワンバウンドで捕り、併殺を取りに行くのを防ぐために、打者をその場でアウトにするいうルールです。

 走者が1塁のみ、または1・3塁の時は、打者走者が真剣に走っていれば通常、併殺は無いので、このルールは適用されません。

 一口に内野フライといっても、小フライ等で内野手がダイレクトで捕れるかどうか微妙な場合もあるので、審判が『インフィールドフライ』の宣告をするのは、野手が容易に捕球できると判断し、捕球体制に入った時です。
 (バントの場合は小フライになる事が多いので、インフィールドフライは適用されません)

 また、外野手が内野のエリアまで来て捕球したような場合にもインフィールドフライは適用されますが、逆に、内野手が外野のエリアまで追いかけて行ってフライを捕球したような場合は通常、インフィールドフライは宣告されません。
 (どの程度の範囲の打球までインフィールドフライにするかは、その時の審判の判断によります)

 インフィールドフライが宣告されても、ボールデッド(タイムの状態)になっている訳では無いので、走者は危険を冒してタッチアップも出来ますし、野手がフライを落とした場合にももちろん次の塁を狙って走る事も出来ます。
 この場合、打者は既にアウトになっているので、走った走者をアウトにするにはフォースプレーではなくタッチをする必要があります。

 なお、『インフィールドフライ』が宣告されてもその打球を誰も捕れず、打球がファールになった場合は、インフィールドフライは取り消され、通常のファールと同じ扱いになります。

 フェアかファールか際どいフライの時は、審判は、インフィールドフライ・イフ・フェアー』とコールします。これはコールの時点ではフェアーとファールの区別が付きかねるが、フェアーであったらインフィールドフライになるという事です。




 それから、非常に稀なケースだと思いますが、通常、走者は塁上にいてもフェアーの打球が直接当たった場合アウトなりますが、インフィールドフライの場合は特例として、走者は投球時の塁上にいれば、打球が直接当たってもアウトにはなりません。
 この場合、打者がアウトになるだけで、試合再開となります。



■打撃妨害■



 打撃妨害とは、打者のスイングした時のバットが捕手のミットや手に当たった場合の事です。
 捕手が通常の位置で捕球していればこういう事はなかなか起こらないのですが、捕手が送球を焦って前に出過ぎた場合などに起こる事があります。

 それから、捕手がボールを持たずに本塁上またはその前方に出た場合も打撃妨害となります。

 この場合、審判は『打撃妨害』(またはインターフェアー)とコールします。
 (打撃妨害にも関わらず打者が打つ事もあるので、タイムをかけるのはプレーが一段落ついた時とします)


 そして、この打者は1塁に行く事が出来、塁上の走者は、押し出されて自動的に進塁出来る走者以外は、スタートを切っていた(盗塁を企てていた場合)時のみ、進塁できます。
(公認野球規則 7・04(d))


例1 走者1・3塁の時に打撃妨害があった時は、打者に1塁が与えられ、1塁走者は自動的に2塁に進めますが、3塁走者はスクイズやホームスチール等でスタートを切っていない限り進塁出来ません。)

例2 走者2塁の時に打撃妨害があった場合は、打者には1塁が与えられますが、2塁走者は、3塁へ盗塁しようとしていた場合のみ、3塁へ進塁出来ます。 ~リードをしていた程度では、『盗塁を企てている』とは言えません。)
 


 2004年からルールが変更になり、3塁走者が本盗やスクイズでスタートを切った際に打撃妨害があった時にはボークも記録され、他の走者スタートも切っていたかどうかに関係無く一つづつ進塁出来る事になりました。

 (公認野球規則 7・07(注2))

 普通に打つ時と本盗・スクイズの時とでルールが異なるのは少し妙な感じもしますが、2004年版の公認野球規則上ではこのようになります。

 ※
なお、打撃妨害にも関わらず打者が打ち、打者走者と塁上の全ての走者が一つ以上進塁した場合は妨害は無かったものとし、そのままプレーが続きます。
 (打者や走者がそれ以上の塁を取ろうとしてアウトになった場合や、走者が塁を踏み忘れ、それを守備側にアピールされた場合でも。)

 ※
それから、打撃妨害にも関わらず打者が打ち、打者と全ての走者が一つ以上進塁出来なかった場合は、基本的に打撃妨害を採りますが、攻撃側の監督は、打った方を採りたいという事を審判に申し出る事が出来ます。

例1 無死2塁で、打者が打撃妨害があったにも関わらず内野ゴロを打ち、打者は1塁でアウトになったものの、走者が3塁に進塁した場合は、基本的に打撃妨害を採って無死1・2塁で試合再開となりますが、攻撃側の監督は、打った方を採って1死3塁としたいという事を審判に申し出る事も出来ます。)

例2 無死3塁で、打者が打撃妨害があったにも関わらず外野フライを打ち、外野手がこれを捕球し、3塁走者がタッチアップしてホームインした場合、基本的に打撃妨害を採って無死1・3塁で試合再開ですが、攻撃側の監督は、打った方を採って1点入って1死走者無しとする事を選択する事も出来ます。 ただし、この1点でサヨナラゲームになるといった場合は、審判が無条件で打った方を採るといった事もあり得ます。)

 このような選択権が発生した場合、攻撃側の監督は、そのプレーが終了した後、すぐに審判に申し出なければならず、また、一度申し出たものを変更する事は出来ません。
 攻撃側の監督が申し出をしなかった場合は、打撃妨害の方を採ります。