野球ルール その2
■走塁妨害■
走塁妨害(オブストラクション)とは、走者と守備者が交錯し、走塁が妨げられた場合の事です。
これには大きく二つに分けて、『走塁を妨げられた走者に対してプレーが行なわれていた場合』(公認野球規則 7・06(a))と、
『走塁を妨げられた走者に対してプレーが行なわれていなかった場合』(同規則 7・06(b))があります。
前者の『プレーが行なわれていた場合』というのは、主に挟殺プレー中に、走者が守備者に妨害を受けた場合の事です。
この場合は、審判は、直ちにタイムをかけ、走者に一つ先の塁を与えます。
つまり、走者が1~2塁間に挟まれている時に走塁妨害が発生した場合は、走者は2塁に進むことになります。
(1塁に戻ろうとしていた時に妨害を受けた場合も同様です)
それによって、塁を明け渡さなければならなくなった走者も、次の塁へ進塁出来ます。
(例えば、走者2,3塁で、2塁走者が挟まれている時に走塁妨害が発生した場合、この走者は3塁へ進み、3塁走者は本塁まで進みます)
それから、内野ゴロを打った打者走者が、一塁を踏む前に一塁手(もちろん、その他の守備者の場合も同様です)に妨害を受けた場合は、この打者走者に一塁が与えられます。
後者の『プレーが行なわれていなかった場合』というのは、例えば、外野の間を抜ける長打を打った打者走者が、1塁を回って2塁に向かおうとしていた時に守備者と交錯し、2塁までしか進塁出来なかった。あるいはどこかの塁でアウトになってしまった。といったような事です。
こういった場合、プレーが一段落ついた時に審判がタイムをかけ、『もし妨害がなかったら常識的に考えてこの走者はどうなっていたか』という事を協議して、その走者の処置を決めます。
それから、捕手はボールを持たずに走者の進路をふさぐ事は出来ません。進路をふさぐ事(いわゆるブロック)が出来るのは、ボールをまさに捕ろうとしている時や、実際にボールを持っている時のみです。
捕手がこの規定に違反したとみなされる時は、審判は走塁妨害(オブストラクション)を宣告し、走者のホームインを認めます。
■攻撃側の守備妨害■
守備妨害は『攻撃側の守備妨害』、『審判員の守備妨害』、そして『観客の守備妨害』の3つに大きく分けられます。
(公認野球規則2・44)
まず、『攻撃側の守備妨害』についてですが、これは盗塁を刺そうとしている捕手の送球動作を打者が意図的に妨害した場合や、捕球しようとしている野手と走者がぶつかった場合などがあります。
まず、盗塁を刺そうとしている捕手の送球動作を打者が意図的に妨害した場合、その打者はアウトになり、走者は元の塁に戻されます。
しかし、捕手が妨害を受けたにも関わらず送球をして走者をアウトにした場合は、その走者がアウトになり、妨害は取り消されます。
(ただし、捕手の送球の後、ランダウンプレー(挟殺)が始まったら、審判はタイムをかけ、走者を元の塁に戻し、守備妨害で打者をアウトにします)
捕球しようとしている野手と走者がぶつかった場合や、走者に打球が直接当たった場合は、その走者がアウトになり、打者には1塁が与えられます。
(ただし、既にアウトになった走者が、一塁送球を故意に妨害した場合は、打者もアウトとなります)
この場合、ボールデッドになっているので、自動的に進塁できる走者以外は進塁出来ません。
つまり、無死満塁で2塁走者に直接打球が当たった場合、この2塁走者がアウト。打者は1塁に行き、1塁走者は自動的に2塁に進めますが、3塁走者は進塁出来ません。
※一旦、投手以外の野手を通過した(触れた)打球が走者に当たった場合は基本的にインプレーでこの走者もアウトにはなりませんが、一旦、内野手を通過した打球でも、さらに他の野手が捕球しようとしていたボールに走者が触れた場合は、ボールデッドとなりこの走者はアウトになります。
(公認野球規則7・08(f)【注1】)
「他の野手が捕球しようとしていた」というのがどの範囲までかは、その場の審判員の判断によると思います。
それから、打者がスイングし終わった後の余勢や反動でバットが捕手に当たり、捕手の送球が妨げられた場合、この行為が故意でなければ妨害にはなりませんが、ボールデッドとなり、走者は全て元の塁に戻されます。
他に、ファールフライを追いかけている選手とベースコーチがぶつかって、この選手がフライを捕球出来なかった場合も、『この接触が無ければフライを捕れていた』と審判が判断すれば、このベースコーチに守備妨害が適用され、打者がアウトになります。
しかし、こういった接触があってもファールフライの落ちた位置がこの場所からはるか遠くで、接触が無くても捕る事は出来なかったであろうと審判が判断した場合は、妨害は無かったものとし、通常のファールと同じ扱いになります。
※捕手が打球を処理しようとしているときに、捕手と一塁へ向かう打者走者とが接触した場合は、守備妨害も走塁妨害もなかったものとみなされて、何も宣告されません。
(公認野球規則7・09(l)【原注】)
これは、打者走者が一塁へ走るのも、捕手が打球を処理しようとするのもごく自然な行為だからです。
ただし、「打球を処理しようとしている野手による走塁妨害は、非常に悪質で乱暴な場合にだけ宣告されるべきである」とも記されています。
逆に、打者走者が明らかに打球を処理しようとしている野手(もちろん捕手も含む)の守備を妨害したと審判が判断した場合は、守備妨害で打者がアウトになる可能性もあります。